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上記曲のイメージ小説。
歌詞の引用が多く、小説というより曲の補助のようなイメージ。
ヘタレン。一人称は僕。
シバション様からの削除依頼があった場合削除いたします。
「うわぁっ…!」
突然の浮遊感。
ぽすん、と柔らかいものに着地する体。
何が起きたのか、解らなかった。
【 ごみばこ 前編 】
そこは見知らぬ場所だった。クッションとなったぽよぽよとした塊から身を離し辺りを見渡すと、クッションと同じような灰色の物体が色を変えて形を変えて、数多く漂っている。
呆然としたまま起き上がり、とりあえず少し歩いてみれば、白色の無機質な壁にぶつかった。
四方をその得体の知れない壁に囲まれた空虚に、僕は居た。
…ここはどこ?
今日も、マスターとリンとの歌の練習があるのに。ここには、マスターもリンも、隣に居ない。
ようやく誰もいない、孤独だと自覚すると、僕は急激に不安に陥る。安定感のない体がバランスを崩して、尻餅をついた。
―――なんで?
力が、入らなかった。
どんなに手足に力を込めようとしても、見えない何かに押さえられているように、僕の体は立ち上がらなかった。
さらに僕の力は弱まり、上半身まで支えられなくなって、ゆっくりと下降する。
冷たい床に背中が触れ、仰向けになる。
僕の視界に、縁取られた青空が広がった。
―――あそこだ。僕とリンが一緒に歌を歌っていた場所は、あの青空の鮮やかな世界だ。
行かなくちゃ。マスターとリンが待ってる。少し遅れるだけでリンはすぐに怒るんだ、マスターに迷惑かけるんじゃない!って。
マスターは僕らを見て嬉しそうに笑うんだ、ほら歌おうって言って手を差し伸べてくれる。
今は…その差し伸べてくれる手がなかった。
僕は………一人ぼっち?
僕は…捨てられたの?
そんなはずない!
色が薄れていた世界を睨みつけた。マスターは僕を捨てなんかしない。
もしかしたら、マスターが間違えて僕をここに置いてしまったのかもしれない。
じゃあ早く気付いてもらわなきゃ。マスターを呼んで、気付いてもらうんだ。
「マスター!早く出して!僕はここに居るよ!」
「マスター!!聞こえないの?」
「早く出して…!早く、ねぇ!」
何度も声を張り上げて、マスターを呼ぶ。
だけどマスターの手は一向に見えなくて、リンもいなくて、僕は、一人ぼっちで。
「マスター…リン…はやく、出して、ねぇ」
嗚呼、歌の練習、しなきゃいけないのに、叫びすぎで、喉が痛い。歌えなくなっちゃう。
リンにまた怒られちゃうよ。マスターも困っちゃうよ。
しだいに視界が掠れていく。涙のせいだけじゃない、体全体が、空気に溶けていっているような感覚。
自分の体が自分のものじゃないみたいで、怖い。
叫び疲れ何も見たくなくて膝を抱えて塞ぎこんでいたら、カチッと音が聞こえた。
僕はその音が空から聞こえてきた気がして、思わず顔を上げる。
鮮やかな世界に映ったのは、一つの窓。
[ ゴミ箱を空にしますか? ]
ご み ば こ … ?
警鐘が鳴り響く。
その窓に描かれていたのは、真っ白な壁でできた円柱に矢印が貼り付けられた、白い箱。
まさか。
僕は力を振り絞って立ち上がった。
ガクガクと膝が笑う中僕が見たのは、白い壁に囲まれた僕自身と、緑色の矢印。
呼吸が止まった気がした。それでも僕は、叫んだ。
「マスター!!」
「僕は居るよ!!消さないで、消さないで!!イヤだよマスター!リン!!」
カーソルが、僕を通り過ぎて、くしゃくしゃと、一瞬、音が鳴る。
「 」
力一杯叫んだのに、それは音にはならなかった。
―― も う 、 手 遅 れ 。
青空を見上げた。鮮やかな世界は、遠ざかった。奇妙な浮遊感が僕を包む。
嗚呼、もう何も見えない。聞こえない。
感じないよ。
消えていくよ…。
僕の意識はそこで途切れて、――――ほら、もう、何もない。