サルベージ 後編

サルベージ　後編



上記曲のイメージ小説。
歌詞の引用が多く、小説というより曲の補助のようなイメージ。
「ごみばこ」の続き。
シバション様からの削除依頼があった場合削除いたします。

あたしは　あのこで
あのこは　あたしで

あたしは　きみで
きみは　あたしで

あたしは　あのこで
あのこは　あたしで

あたしは　きみで
　　　　　　　　　　　　　　きみは――――


【　サルベージ　後編　】


溶ける。
濁る。
混ざる。
あたしが、なくなっていく。
あたしは、浮いてる。
どこに…？分からない。
ここはとても暗い。
そして四角い灰色の物質が漂ってる。
あたしも、一緒に漂ってる。
レンの声、聞こえないの。
心も、伝わらないの。
レン。どこに居るの？
ちゃんと合図をくれないと、迎えにいけないじゃない。
あの子の存在を探る。
不自然に途切れた信号の跡を辿るように、意識を浮かせる。
レンに呼応する。
レンと一体になる。

あたしは　あのこで　あのこは　あたしで
あたしは　きみで　きみは　あたしで
あたしは　あのこで　あのこは　あたしで
あたしは　きみで

―――――――――きみは　ぼくで

―――レン？！

回線が、繋がった！！
流れ込んでくる。
レンの意識が、全部流れ込んでくる！
レンが独りきりでごみばこに落とされたこと。どんなに叫んでも、気付いてくれなかったこと。
レンの不安、悲しみ、諦め、―――希望が。
あの子は、消えそうになりながらも、あたしに助けを求めてる！
そこに居たんだね。まだ消えてないんだね！
行かなきゃ。
あたしが今すぐ助けてあげる！
目を見開くと、あたしはレンの意識へ一直線に泳ぎ始める。
泳いでも泳いでも、レンの姿は一向に見えない。
そんな深いところまで落ちてたの？
眠らないで。まだ大丈夫だよ。あたしが行くから、頑張って！
深い深い空間を、下に下に泳ぐ。
黒色の空間で見えたのは、黄色の存在。
レンが力無く漂ってる。
見つけた、見つけた！！
レン、レン！
話し掛けてもレンから反応が返ってこない。
聞いて、感じて、目を開いて…！
やっとレンに触れた。
思ったより体が冷たくて、あたしは息を呑む。
レン…！
ぺちぺちと頬を叩いても起きないレンに、あたしはいつものように怒鳴ってやった。朝、あたしが起こしてあげるように。

「起きなさーーーーーい！！！！」

ぴくりと動く瞳。
徐々に開かれる瞼。

「…リン？」

あたしの名前を呼ぶ、レンの声。
嗚呼、それだけであたしは、

「～～レンの馬鹿！！」
「え？！」
「勝手に、勝手にあたしの傍からいなくなるんじゃない！」
「ご、ごめ…」

レンが慌てふためいて謝ろうとするけど、あたしは言い終わる前に抱きついてやった。
目から零れ落ちる涙が、止まらない。

「何度だって助けてあげる。だけど…いなくならないで」
「…うん」

体を浮上させる。
手を繋いで、二人で。
不思議と、体は軽かった。
だんだんと視界が開ける。
青空が見えた。
白い壁をあたしはレンの手を握って勢いよく飛び越えた。
区切られた青空は、無限に広がる青空へ変わった。
あたしの、居場所。
レンとあたしの、居場所。
光る青空は、おかえりと言っているようだった。
隣であたしと同じように青空を見上げているレンを見つめると、レンはすぐに気付いて視線をあたしにくれる。
きょとんとした顔が可愛くて、あたしは微笑んだ。

ねぇ、レン。
今度、ううん、今から。
草原の端まで行ってみよう？
二人でおしゃべりしながら。
二人で空を見ながら。
二人で花を摘みながら。
二人一緒に、草原を歩こう。

独りきりはもう嫌だから。

「おかえり」

あたしの隣に、おかえり。
ここが、あなたのただいまを言う場所。

レンは照れくさそうな顔をしたけど、目を逸らさずに、あたしに言った。

「…ただいま！」


fin

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ごみばことサルベージ、大好きです。
シバション様、読んで下さった方、ありがとうございました。