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上記曲のイメージ小説。
歌詞の引用が多く、小説というより曲の補助のようなイメージ。
ヘタレン。一人称は僕。
シバション様からの削除依頼があった場合削除いたします。
落ちた先は、青空の見えない暗い世界だった。
何時間も、僕はそこに居た。
居ることしか、できなかった。
【 ごみばこ 後編 】
ぼんやりとした視界。
色という色がこそげ落ちたその世界に、まだ僕は居た。
薄くなり始めている体を丸めて、必死に溶けないように抵抗する。だけどそんな抵抗を嘲笑うかのように、周りの灰色の物体は不規則に消えていった。
打ち捨てられたただの記号の羅列も、消えていく。
捨てられ、薄れ、消える。僕自身も例外なく薄れているのを見て、僕もその記号の羅列にしか過ぎないことを思い知った。
僕は、マスターに、捨てられた。
その事実を僕が僕に告げる。
間違えて捨てられたんだと信じたかった。だけど、マスターは僕の叫びに気付いてくれなかった。
不思議と、僕の中には寂しさも悲しさもなかった。
不鮮明な世界で、不鮮明な物たちと肩を寄せ合う。
そうしている間にも、僕と同じように上から墜ちてくる新しいガラクタに、自然に笑んだ。
嘲笑でも諦めでもない、それは仲間がいることへの微かな喜び。寂しくなかった。
悲しくはなかった。――― 一緒に捨てられるのなら。
ガラクタの雪ははらはらと降り続いた。
それにだんだんと埋まっていく自分を見て、溺れてしまうかも、なんて他人ごとのように思った。
徐々に馴染み始めてリンと一緒に駆け回っていた青空の下を思い出す。
ねぇ、マスター。
まだマスターの心の中に、僕は残っているのかな。
ほんの少ししか一緒に居られなかったけど、僕は、マスターのこと、大好きだった。ううん、大好きだよ。
上手く歌えなくて隠れて泣いていたときに、差し伸べてくれた温かい手を、僕は絶対に忘れない。
リン。
僕が突然いなくなって驚いてるよね。…泣いてるかな?
僕だって驚いたんだ。僕だって、怖いんだ。一人ぼっちは、イヤなんだ…!
だけどもう手遅れ。僕はあの白い壁を乗り越えられないまま、呑み込まれた。
マスターも、悲しんでるのかな…?
二人に泣いて欲しくなんかないんだ。
だから、僕のことなんか忘れて。ただの記号の羅列は、もう忘れてしまってよ。
自分でそう思った癖に、ズキンと胸が跳ねた。本当は苦しいんだ、怖くて怖くて堪らない。
一人ぼっちがこんなに怖いなんて、僕は知らなかった。
いつもリンが居たから寂しくなかった。
いつもマスターが優しかったから温かかった。
もう二人の隣に、僕は居ない。
もう二人の隣に、僕は戻れない。
突然、ひゅっと空気が通り抜けた。
足元から流れた風は、ぽっかりと開いた無の空間への入り口。
僕の足元に生まれたその入り口は、僕の意志とは関係なく僕を導く。
もう、抵抗はできなかった。
深い深い場所に、頭からゆっくりと沈んでいく。
さっきの場所と違って、ここは本当に暗い。鮮やかなあの青空も見えなかった。自分の姿もおぼろげだった。
怖くないよ。平気だよ。
その言葉は最後に僕が抵抗した証。
外に居るマスターとリンに向けるように、僕は笑った。
くしゃくしゃとまた同じ音が響いた。
これで、本当に最後。
嗚呼、なんだか、眠たくなってきた。
少し、寝てもいい…?
また、リンに怒られながら、起こされるのかな。
それとも、マスターがリンより先に気付いて、起こしてくれるかな。
瞼が落ちてくる。僕はその睡魔の波に、素直に乗った。
じゃあ、おやすみ…。
眠るように、目を閉じた。
感覚は、もうなかった。
ほら、何もない…。
「ごめん…ごめんなさい…レン…」
微かに耳に届いた声は、マスターの声だった。
それは…………懺悔…?